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静電気
Static electricity
静電気はクリーンルームやブース内の機器に損傷を与えたり、爆発の原因になる可能性がある他、帯電粒子が付着してクリーンエアによっても除去できなくなることがあるため、空気清浄業界ではその対策がしばしば取られます。ここでは、そもそも静電気とは何か、何故発生するのか、どうやって除去するのかなどについて勉強しましょう。
乾燥して起きる静電気
冬に車に乗ろうとドアノブに触った時、ピリッと来たという経験があるでしょう。これは摩擦により発生した静電気が放電したのです。冬場は空気が乾燥して、電気の逃げ場となる水分が少なくなるためこのような現象が起こります。したがって静電気を発生させないようにするためには空気湿度を55〜60%以上に保持すれば良いので、加湿することによって静電気を予防するということもアプリケーションのひとつとして行われています。さて、手がピリッと来たとしてもそれによって人体に障害が起こることはありません(このときの帯電位は3000Vぐらいです)。一方、強電線に触ったら手から足へと電気が貫通して死亡したり、内部から組織が壊死してくることがあります。これは「静電気」と「動電気」の違いによるもので、その電気がエネルギーを持っているかどうかに関係します。
爆発しないタンクローリー
ガソリンを運ぶタンクローリーはどうでしょうか?タンク内のガソリンが走行とともにタンク内壁とこすれ合うと当然摩擦電気が起きます。これが火花放電でも起こしたら大爆発につながります。したがって昔のタンクローリーは車体に鎖を付けて、それを地面に這わせながら、電気を地面に逃がしつつ走行していました。今はタンクに静電気除去装置が付いていますので、昔のようにジャラジャラ音をたてて走行する車は見かけなくなりましたが、それでもアースリールという巻き取り式のアースベルトは備えています。またスタンドで地下オイルタンクに注油するときなどにホースの中をオイルが通るときの摩擦電気が危険なので、しっかりアース接続してから注入しています。
最近増えてきたセルフ式のスタンドでも給油するときは静電気除去シートに触りますね。また、車から降りた後にドアに触って感電することもあります。これを避けるには、降りる時に手でドアの金属部分(塗装面でもよい)に強く触れながら足を地面に付けるのが良い方法です。
静電気と動電気
小学生の頃、セーターでこすった下敷きを頭の上にかざしたら髪の毛が吸い寄せられて逆立ったという実験を理科でやったことはありませんか?またダイレクトメールが送られてきて、その封筒が最近は紙ではなくプラスチックのものが多くなり、中味を取り出すためにバリバリッと糊付けされている妻面を剥がし、封筒部分をゴミ箱に捨てようとしたら手にまとわりついてなかなか捨てられなかったり、封筒に紙が吸い寄せられたりということもあるはずです。これらはすべて静電気の仕業です。他にもスカートがストッキングにまとわりつくとか、アクリルの上着を脱ぐときにパチパチ音がするなど、さらに暗いところなら火花が見えます。高電圧がアーク放電したときの光です。
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有名な話は「雷(カミナリ)は静電気によって起こる」というもの。水の粒が渦巻いて空気と摩擦し雷雲の中に溜まった静電気が絶縁体である空気の絶縁を破って地面に向かって放電するのが雷ですが、このとき空気中の水分の多いところ、すなわち少しでも電気の流れ易い部分を通ろうとするのでギザギザに見えるわけです。 ところで「雷が近づいたら、腕時計や首飾りなどの金属製のものを体から離せ」というのは本当でしょうか?これはウソのはずです。というのは、天空はるかなるカミナリ様から見た場合、導電率の違いにかかわらず導体であれば近いほうへ落ちるので、人体に何を付けていようと確率は同じはずです。ただし広いゴルフ場で傘をさしていたり、クラブを上に掲げているのは危険かもしれませんが、手に提げている限り確率は変らないはずです。むしろ高い木に近付いたりするほうが余程危険です。木に落ちた雷が木の下に避難している人間に放電することがあるからです。こういうときは、いちはやく建物や自動車の中に避難することです。ドアの内側などの金属部分に触っていない限り、落雷しても、電流は鉄のボディーを通過してしまうからです。 |
さて一方の動電気ですが、これは「流れる電気」です。ランプが点灯するのは電気抵抗の大きい部分に電流が流れると発熱して光るとか、モータが回転するのは電流が流れる事によって磁力が生じること(電磁誘導)を応用したもので、この電磁気力は「クーロン力」とも呼ばれます。流れる電気は自然界には存在しないはずです。人間が作った人工の電気です。これは発電所で常に電気を起こしていますから、電流は流れ続けます。自然の電気である静電気が3kVもあるのにピリッと来たぐらいで済むのに、もっと低い電圧でも電線に触れたら命が危ないというのはアース放電してすぐ無くなる電気と流れ続ける電気の違いがあるわけです。
昔から静電気の存在は知られていた
紀元前600年頃のギリシャ時代に、アクセサリとして身に付けていた琥珀の表面にホコリが付き、いくら拭いてもまた付くので、琥珀には「稀薄な生命が宿る」と言われていたように、それが何かはわからないが、そのようなエネルギーの存在に気づいていた人が居たようです。
モノには電気をよく通す『導体』、通さない『不導体』、場合によってこの性質が変る『半導体』がありますが、摩擦電気が溜まりやすいのは『不導体』です。
なぜ静電気が起こるのか?
あらゆるものは分子の集まりです。分子は原子の集合体です。原子は原子核の回りを電子がグルグル回っている構造だと学校で習いました。電子はマイナスの電気を持っていて、これが電気の「素」です。原子核は陽子と中性子のかたまりで、陽子がプラスの電気を帯びているので電子のマイナスと釣り合って普段は平衡しているのですが、摩擦という外的エネルギーを加えるとこの均衡が崩れます。前記の例の場合、セーターでプラスチック下敷きをこすると、セーターの原子から電子が離れて下敷きに移動します。下敷きはマイナスに帯電し、セーターは電子が減るのでプラスに帯電します。この静電気は時間が経つと消えてしまいます。この下敷きを頭の上にかざすと、毛髪はプラスに帯電しやすいので引き合います。このように物質にはプラスに帯電するものとマイナスに帯電するものがあります。このプラスマイナスどちら側に帯電し易いかの序列を表にしたものが下記です。
| ←+ | 獣皮 | 毛 | 水晶 |
ガラス |
雲母 |
綿 | 紙 | 麻 | 絹 | 木 | ゴム | 琥珀 | 樹脂 | 人体 | セルロイド | 金属 | エボナイト | −→ |
帯電序列
静電誘導とは
それでは静電気を帯びた物質が何故他の物質を引き寄せるのでしょうか?帯電列表にありますように、ガラスはプラス、金属はマイナスに帯電するので、プラス静電気を帯びたガラスに金属を近付けると、金属の中の電子はガラスの静電気に引かれてガラスに近い面に集まります。ガラスから遠い側にはプラスの電気が集まります。このように静電気を帯びた物質が他の物質に静電気を起こさせることを「静電誘導」と呼びます。
プラス電気とマイナス電気が引き合って金属はガラスにくっつきます。接触すると電子が金属からガラスに移動し、ガラスの静電気を打ち消すだけの量は無いのでガラスがプラスに帯電したままであり、金属は電子を放出したためこちらもプラスに帯電し、プラスとプラスが反発して金属は弾けるようにガラスから離れます。
この、引き合ったり反発する力(クーロン力)はふたつの物質の距離の2乗に反比例します。これを「クーロンの法則」と言います。前に述べた「電磁誘導」もこれと似たもので、電気の力と磁石の力、すなわち電磁気力という力が生じることです。
静電誘導の応用
クリーンエアフィルタを使ってタバコの煙を濾過すると思っている人がいますが、普通のフィルタではタバコの煙は通過してしまいます。室内の空気をきれいにする「空気清浄機」はクリーンエアフィルタ(HEPA)を使ったものですが、タバコは現実には電気集塵機を用います。これは煙にプラス電気を帯電させて金属に引き寄せて吸着するもので、定期的にこの金属部分を清掃します。
静電誘導は乾式コピー機にも応用されています。最近コピー機のメーカーの技術者から、以下聞いた話です。コピー機はレンズを通して原稿台に置かれた原紙の画像を感光ドラムという円筒に映します。円筒にはセレンという半導体が蒸着されており、強いプラスの静電気を帯びています。ここに光を投じると原紙の文字や線の部分は光が当たらず、他の部分が当たって円筒に写ります。光が当たった部分は抵抗が小さくなって導体になります。静電気は光が当たらなかった部分だけに残ります。そこにマイナスの電気を帯びたトナーという炭素粉を吹き付けると光が当たらなかった部分だけにトナーが吸い付きます。ここで裏面にプラスの電気を帯電させたコピー用紙を円筒に巻きつけ、加熱して用紙にトナーを焼き付けます。円筒のトナーは9割方紙に移り、残ったものは拭き取ります。
工場は静電気の危険に晒されている
工場では材料の梱包を解くとか、フィルムがローラーを通って流れるとか、液体や気体がパイプの中を通って流れるなど、摩擦や剥離が頻繁に行われています。したがって家庭など以上に静電気の危険に晒されています。特に化学工場ほどこうした工程が多いので、爆発の危険があります。また半導体部品を使った電気機器にはガラスエポキシ基板というものにICや抵抗、コンデンサなどをはんだ付けしたものが入っています。IC等の電子部品が静電気によって破壊される、いわゆる「静電破壊」を防止するためにアセンブリ工場では様々な対策をとっています。ガラス基板の放電によりパターンが破壊されることさえあります。人が感じないような低い電圧でも静電破壊は起こります。ICの中には線幅の非常に細い回路があり、放電によって一瞬で大電流が流れ、高温でパターンが溶融したり、ブリッジが出来たりします。除電器を設置するとか、作業者の腕にアースバンドを巻いて接地します。帯電防止スプレーなども使われることがあります。
ホコリの付着
ホコリはクリーンルームの敵であるとともに、モノに付着する場合はますます厄介です。静電気によってホコリが付着するケースですが、例えば金属缶の場合、プラスに帯電したホコリが近付くと静電誘導によって金属表面にマイナスの電気が集まり、クーロン力が働いて、結果として金属表面にホコリが付着します。きれいだった金属缶が汚れます。もともと金属缶が帯電していたわけではないので、ホコリを無くするか除電するしかありません。三基計装株式会社には「イオン化エアシャワー」という製品がありますが、金属缶などのゴミ付着対策には高風速のクリーンエアでホコリを吹き飛ばすとともに、静電気で再び付着するのを防ぐために除電機能を併せ持っています。これが製品名の由来です。金属のような導体ではなく不導体の場合は、逆極性に帯電したホコリを吸い寄せます。したがって不導体(絶縁体)を除電してもホコリを除電してもどちらでも良いのです。
静電気対策
上記のように静電気対策には様々ありますが、工業的に最も一般的に行われているのは除電器を設置することです。中でもコロナ放電式除電器はイオナイザと呼ばれます。高電圧を針状の電極に印加し、電極と接地面の間にコロナ放電を起こさせてイオンを生成します。+の電圧を印加すると+のイオン、−の電圧を印加すると−のイオンが発生します。イオナイザにはDC方式とAC方式があります。除電器の性能は除電するまでの時間=除電速度と、+イオンと−イオンの量がどれだけ等量に保てるか、すなわち対象物を如何に0Vに近づけられるかというイオンバランスと呼ばれる性能で表されます。除電速度の面ではDC方式が、イオンバランスの面ではAC方式が優れています。この両者の利点を併せ持ったものがパルスDC方式で、+イオンと−イオンのそれぞれの電極針(極性が異なる)を用いて+イオンと−イオンを交互に出すものです。またパルスAC方式というものもあり、これは電極針が1本で済みます。使い方を誤ると逆に帯電させてしまいますので、対象物の帯電量に応じた除電が行われるように調整する必要があります。

イオナイザ